頑張るから・・

その他

男親は娘が可愛くて仕方がない・・って言うけれど、
家族の誰もが呆れるくらい、父は私に甘かった。


優しい反面、頑固で分からず屋だったから、時には喧嘩もしたけれど・・、そんな事も今となっては、全てが懐かしい思い出だよね。
父の病気が発覚したのは、今から1年7ヶ月前。
癌は決して良性ではなく、医者からは余命を宣告されていた。
手術を受け、一命を取り留め、そこから始まった闘病生活。
リハビリがてらよく屋上を散歩して、一緒に夕陽を眺めたよね。
屋上を3周歩くのが、父の日課になっていて、
その散歩に、週に2回、私が付き合って歩くのを、父は楽しみに待っていた。
病室に飾るお花を上手に活けてあげたくて、本を見ながら一生懸命、フラワーアレンジしたんだよ。
あんまりセンス良くなくて、なかなか自分で気に入る物は出来なかったけど、父は喜んでくれていた。
病院に見舞いに行く度、歯磨きは必ず私がしてあげていた。
笑うと口元から見えてた前歯も、食事をするのに使った奥歯も、全部私が作ってあげた歯だったから。
3ヵ月の入院を経て、・・そして、退院。
車が大好きだったから、よくドライブして、あっちこっちの公園まで一緒に散歩に行ったね。
沈む夕日を長い時間見せたくて・・
できるだけ、高い丘の公園探して行ったんだよ。
退院をして半年が経ち、少し元気になって来たから、春には早咲きの河津桜を見に行ったよね。
去年の夏。
北海道にも旅行に行った・・。
7月のラベンダーを一度見せてあげたくて、富良野をドライブしたよね。
結局それが、最後の旅行になっちゃった。
お父さんが再び入院となったのは、それから間もなく。
去年の夏は暑かったから
病院の方が涼しくって楽だよね・・って、そんな冗談も言えてたのに。
容体が一気に悪化し、しゃべる事もできなくなった・・そんな父に会ったのは、
ダンロップ杯最終戦の前日だった。
年は越せないかもしれない・・って。
いきなり突き付けられた現実に、どれ程泣いたか分からない。
あの時も、忘れられない一日だったよ。
でも無事に、年は越せたね。
丑年だよ。 年男だね。
年賀状、ちゃんと作ればよかったな。
先週は、耐久準備で忙しくて、会いに行ってあげられなくて・・ずっと気になっていたんでね、金曜日、仕事の目処がついた時点ですぐに車を走らせた。
今思えば、あれが「虫の知らせ」だったのかも・・。
珍しく長い時間、父の傍に付き添っていた。
「辛い?」 と聞くと、「辛くない。」 って
「苦しい?」 って聞くと、「苦しくない。」 って
言葉を発せられてた時には、そう口にしていた父が、
今はあまりに苦しそうで、辛そうで・・
いつもだったら、「頑張ってね。」 って
そう言い残して帰って来たのに、
言葉にする事が出来なかったよ。
1月31日、朝。
「今日は私が病院行くから、お母さんは出掛けておいでよ。」 って、母に息抜きさせてあげようと思ったのに・・
まさかそのまま、私一人で父を看取る事になるとは・・
夢にも思ってなかったよ。
母も兄も間に合わない中、父の傍らでどれだけ泣いたか分からない。
それでも、傍に居られたから。 最期に会っておけたから。 少しだけ、今悔やまずに過ごしていられるのかもしれない。
本当に、父は安らかな顔だったから
お別れの日は、私も笑顔で送り出してあげるんだ・・って、
そう、心に決めていた・・。
でも、花に囲まれた祭壇で微笑む父を見るたびに、涙が止まらなかったよ。
「頑張りなさい。」 って母が小声で言ったけど、
頑張ったんだよ。 一人で必死に頑張ったんだよ。
冷たくなって行く父の傍で、一人で泣きながら頑張ったんだよ。
だからもう、「頑張らなくていいんだよ。」 ・・って
写真の父が、言ってくれてる気がするんだもん。
1月31日の日、
午前中まで降ってた雨は、父を連れて行くかの様に、空へと吸い込まれて行った。
もう、この病院に通う事もないんだね。

青い空、綺麗だよ。
あの屋上から、一緒に何度も眺めたこの空・・
見えていますか?
お父さん。
頑張るから。
頑張るから。
空の上から、見守っていて下さいね。

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コメント

  1. みっちー(@^^@) より:

    >ほりぶんさん
    先日は、ありがとうございました。
    ほりぶんさんにお会いできて、父も喜んでいたと思います。
    今日は天気も良さそうだし。
    あとは頑張ってだけだぁ~♪

  2. ほりぶん より:

    先日、お父様にお会いした時に、かくかくしかじかでごにょごにょごにょ、とお願いしておきました。
    だから大丈夫ですよ~。

  3. みっちー(@^^@) より:

    >ヨシムラさん
    ありがとうございます。
    何かをやってれば気が紛れている気になって・・、それでも気持ちが抜けていて、しっかりこなせていなかったり・・で、自分で自分が心配になってしまいます。
    時間薬なんでしょうね。
    でも、元気ですよ(^^) 大丈夫。
    春になったらまた遊んで下さいね。(ヨシムラさん、冬の間はバイク乗らない人みたいなんで・・笑)
    >おかぢむさん
    ありがとうございます。
    ふと、おかぢむさんの弟さんの事も思い出しました。

  4. おかぢむ より:

    心より、お父様のご冥福をお祈り致します。

  5. ヨシムラさん より:

    ワシも去年まで4年続けて、近しいヒトやそのご親族が亡くなられた、とゆーシーンがありました。なので4年続けて誰かのお通夜やお葬式に行っています。多分、みっちーさんもワシも、そろそろそういう時期に差し掛かっている年代なのだと思います。
    去年、ワシの実パパーンも心筋梗塞で九死に一生を得ました。本人には口が裂けても言いませんが、多分もぉ長くないと思います。
    逝ってしまうヒトには選択肢はあんまり無いのだと思います。亡くなってしまえば、もぉその方の選択肢ではありませんから。だからその後は、残ったヒトの満足でしかないのかも知れません。
    だからこそ、思い出してあげなくてはならないのだと思います。時々感謝するコトが必要なのだと思います。
    お父様のご冥福をお祈りするとともに、みっちーさん自身が早く元気出すコトが、何よりの供養になるのではないかと。そーなって初めて、お父様も安心して空の上から見守っていられるよーになると思います。

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